サウンド・オブ・サンダー(映画)
(ピーター・ハイアムズ監督)
レイ・ブラッドベリの短編「雷のような音」(ハヤカワ文庫「太陽の黄金の林檎」に収録)の映画化ですが、映画を見た時点では原作は未読でした。
後から原作を読みましたが、映画は原作の基本設定を使っただけで序盤以降は全然別物なのですね。
(原作は文庫で26ページの短編ですし)
「のび太の恐竜」でも暴れた“恐竜ハンター”が好き勝手をするとどーなるかと言う話です(嘘)
★
2055年、タイムトラベルを実現した大手旅行代理店“タイム・サファリ社”は白亜紀への恐竜ハンティングツアーを企画して盛況を得ていた。
ツアーの内容は毎回過去の決まった場所の決まった時間に行き、決まった恐竜をお客にハンティングさせるというもの。
あと数分で死ぬ運命にある恐竜を殺すということで、歴史への影響は出ないと言う訳だった。
お客には「過去に未来の物を置いていかない・過去の物を未来に持ち帰らない」ように注意していたが、ある客が「わずか1.3グラムの何か」を過去から持ち帰ってしまったことから、現代に異変が起き始める。
★
予告を見たときから“匂い立つようなB級臭”を感じてワクワクしていましたが、
やー、期待通りで楽しかったですよ。
勢いに任せたベタベタな御都合主義!
時間SFかと思えば突然アクション映画にシフトする意外性!
随所に漂う映像やセットのチープさと、多彩なツッコミ所を持ちながら、
それでいて伏線は(比較的)きっちり回収して話の風呂敷は綺麗に畳み、
観客を楽しませる工夫とサービス精神を忘れないバランス感覚!
いやあ楽しいなあ。
正しいB級映画は心のオアシスです。
なんだか誉めてるのか貶してるのか分からないような書き方をしてますが、ホント楽しかったですよ。
『本格的SF大作』を期待して見ると失望しそうな気もしますけど、お気楽に楽しむには十分な娯楽映画でした。
突っ込みたい所は山盛りありましたけどそれも愛嬌です(笑)
例えば、(以下ネタバレ反転)
「毎回同じ時点の過去に行くのに、毎回恐竜を殺した事実がリセットされて過去のツアーと鉢合わせをしないという設定なのに、最後は過去のツアーに干渉して解決となって、作品内でのタイムパラドックス設定が統一が微妙なあたり」とか、
「序盤の主人公が女性客をくっちゃうエピソードには何の意味が?」とか、
「目覚めさせちゃいけない怪物を延々ライトで照らすなや(笑)」とか
「地下鉄で主人公と因縁がありそうなおかっぱ髪の女性が喰われたのに完全スルーかよ(^^;)」とか、
「基本設定だから仕方ないけど、「過去が変わった」のになんで「最後の時間の波」が過ぎた後でも「現代の建物・施設」が残ってるんですか?」とか、
「最後までタイムトラベルに必要な施設は無事に残ってる御都合っぷりが素晴らしい(笑)」とかですな。
あー、書いたらスッキリした(笑)
(ちなみに、上記のツッコミどころは全て原作には存在しませんので念のため)
根本的な事を言うと「過去を変えたら、未来にツアー一行が戻った時点で未来が変わってるべきでは?」とも思いましたが、しかし「“時間の波”による変化」はこの映画のキモですし、映像的にもとても面白いアイデアだったのでオッケーです(笑)
最後まで見ると「なるほど、確かに“バタフライ効果”だ!」と納得させてくれるサービス精神も素敵でした。
座布団一枚です。
(つーか、この辺は実は原作通りなのですね)
超映画批評さんによるとこの作品、制作費「100億円の大作」ではあるのだけど、
実際は製作途中でプロダクションが倒産、チェコでの撮影隊は水害で大被害と、何度も完成が延期された曰くつきの作品で、額面通りの制作費とは見れないとのこと。
そのあたりを考えると、随所にチープな映像を織り交ぜながらでも、ちゃんと楽しめる映画を完成させてくれたことに涙ぐましさと感動を感じたりもするのでした。
ところで、原作のタイトルの元になった「雷のような音」は映画では登場してないですよね(見落としてなければ)
映画はタイトル変えるべきなんじゃないかなあ(^^;(映画の原題も「A Sound of Thunder」のようだけど)
| 固定リンク
コメント