立喰師列伝(映画)
(押井守監督)
押井守氏のライフワークとも言える「立ち食いのプロ」という存在を描いた作品。
己の弁舌を武器にしてまんまと無銭飲食を敢行する「立喰師」という架空の職業(?)の人々を通して、戦後から現代までの虚実交えた戦後史を語り上げた作品です。
「月見の銀二」「ケツネコロッケのお銀」と言った異名で呼ばれ、戦後の闇市から現代のファーストフード店まで、時代の推移とともに現れては消えていった立喰師たちの店主及び時代との戦いの列伝であります。
昨今では世界的に有名になった押井氏ですが、今作は「多くの人に見てもらう」事を意識した作品では『全く無い』のでご注意下さい。
ひたっすらに氏が好き勝手に書きたい(言いたい)事だけをたれ流したマニア向けな作品であります(笑)
まあ、特別氏のファンではない自分でも普通に楽しめましたので、敷居が高すぎるとは言いませんが(基本的にはバカ映画ですし)、好き嫌いは分かれるだろう作品と思えます。
なお、自分は原作小説は未読で、例によって極力事前情報を入れないようにして見ましたが、
業界の内輪ネタやら押井氏がこれまで各種作品で描いてきたネタがかなり多く散りばめられていますので、この映画に関しては事前に予習しておいた方がいいかもしれません。参考までに。
ポスターは実写なのに「アニメ」として宣伝されていて、見る前はどういう事かいまいち分かっていませんでしたが、
写真を3D映像に取り込んでパラパラ漫画的に動かすような「ミニパト」的な表現でした。
映画というよりゲーム的な映像に感じましたが、なかなか斬新な映像で楽しめました。パロディも多く織り交ぜられていて、やたらと濃かったです(笑)
見ている内に何が本当で何が嘘か分からなくなる虚実交えた異様な歴史感や、荒唐無稽だったり哀愁を秘めていたりする様々な立喰師達も味があって面白かったです。
ただ、とても面白かったのですが、
暗いモノトーンであまり動きのない画面に、延々と変わらない調子でのナレーションが続くという、言ってしまえば起伏のない作品ですので、正直言って催眠効果も強かったです。物凄く;;
睡眠不足気味だったので序盤かなり辛かった…;
両隣に座っていたお客さん達も途中できっちり爆睡してましたし;
「うる星やつら」のメガネのうんちく長ゼリフを延々延々延々と104分間続けたような映画ですので(ナレーションは山寺宏一氏だけど)、それなりに覚悟と集中力が必要です。
きちっと事前に睡眠をとって体調を整えてから見ることをお勧めします。
(或いは、とてもDVD向けの作品と言えるかも知れません)
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コメント
うちでは厳しめのこと書いていますが,「御先祖様万々歳」の中盤まで好きだった人からすると素直に面白かったと思います.ただ押井守ぐらいの立場になってくると,そろそろ自分のやりたいことをやるのでなく,次へどう伝えていくのか分かる作品を創って欲しいな,そうでないと日本のアニメーションも先行き暗いんではないかいと思ってしまいました(宮崎駿も後継者育成失敗しましたし).手法は面白いのだから,もう少し一般に分かるネタで勝負して欲しかったなぁ...ちなみに「ミニパト」見ていないのですが,こんな感じだったのなら一回見てみようかと思いました.
映画の催眠効果はほとんど睡眠ガスが場内に流れたがごとしで,ネタが分かっていないと思しき20代以下が全滅していたのが印象的でした.一方きちんと覚醒していた30代以上は逆にマナーが悪いというか…頼むから劇中に劇場の端から端まで聞こえるような解説を入れないでくれとか,シートの端から端まで伝わる貧乏揺すりを止めて欲しいとか,独特の劇場内雰囲気でした(笑).
投稿: 編集子 | 2006年4月11日 (火) 22時35分
インタビューとかをざっと見た所では、これくらいの立場になれたから好き勝手に走っちゃったみたいですねえ。まあ、たまに小品でやるならアリかとは思いますが、それでもちょっと影響が大きいでしょうか。
ミニパトはもっと普通に一般性の(多分)高いギャグ寄りです。
映像表現が近いかなと。
催眠効果はやはり高そうでしたかー;
きっちり爆睡してるのを確認したのは両隣だけでしたが、前の方も船を漕いでるような人は見えました。
自分の時は上映中に話す人はいませんでしたが、上映前に得々と押井守についてマトリックスがどうのこうのとか(劇場中に聞こえる声で)語ってる人はいました。やれやれ(苦笑)
投稿: でんでん | 2006年4月11日 (火) 23時36分