ユナイテッド93(映画)
(ポール・グリーングラス監督)
2001年の9.11テロの際、ハイジャックされた4機の旅客機のうち、ホワイトハウスに突入「しなかった」ユナイテッド93便の内部の状況を軸に、
各管制センターや関係当局の当日の状況を淡々刻々と積み上げて描いたノンフィクション“的”な作品です。
関係当局や遺族に綿密な取材を行い、管制官や当局の関係者の多くを「本人」が演じているようなドキュメント指向的な作品ですが、
ハイジャック犯に乗客が立ち向かっていった93便内部の様子は、機内から遺族にあった電話などから想像された、あくまでフィクションの内容ですので、その辺りはちゃんと認識してから見るべきではあります。
とはいえ、余分な感情や善悪的な判断を極力廃して、ひたすらに淡々と状況だけを積み上げていく描写は恐ろしく臨場感と緊張感があり、当時の各現場の混乱ぶりも実によく伝わります。
WTCビルへの突入を初めて知った機長の反応などは、第一報を聞いた時にそれを現実的に感じられず悪い冗談と思えてしまったような当時の“自分”の感覚も思い出させてくれて、
まだこんな事件が起きることを想像もしていなかった当時のアメリカの空気感までもがリアルに感じられて、非常に様々に複雑な思いで感情を揺さぶられる作品でありました。
状況の描写に徹して声高なメッセージを謳っている作品ではありませんが、それだけに無言の迫力と映像の力を感じさせられる映画でした。
最後に93便がどうなるかは、見る前から観客は分かっていますし、
決して見ていて楽しい作品ではありませんが、一見の価値はある映画かと思います。
ああいう状況で家族に電話が出来るとしたら、やはり最後のセリフは「愛している」なのでしょうか。
それを言う自分はいまいち想像出来ないですが、日本人だったとしても大なり小なり似たようなセリフになるのかなあ…
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