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2006年8月 1日 (火)

ゲド戦記(映画)

(宮崎吾郎監督)

少々ネタバレありなので御注意を。

一言で言って、普通にあまり面白くなかったです。
一応は映画としての体裁は整えていないでもないですが、良くも悪くもインパクトが無く、映像的な面での「面白み」も乏しい、印象の薄い映画でした。
事象をあまりに「そのまんま」に描写しすぎていて、「イメージの膨らみ」という物は感じられません。
話をまとめるのに精一杯で、見る人を楽しませようとか、話を理解してもらうために表現を工夫しようとか言う余裕が持てなかったのかと思いました。
初監督にそれを求めるのは酷なのかも知れませんが。

いいところを探そうかと思ったのですが、
正直ちょっと思いつきません。うーむ
どうしようもない駄作、とまでは言いませんが、褒められるところはありません。
最初から否定的な目では見るまいと思っていたので残念ですが;

とりあえず、原作ファンにはお勧めしません。
1〜5巻の要素をゴチャ混ぜにして表層的に整えた、文字通りに「超縮小再生産」な内容です。
(ちなみに原作の「外伝」はまだ未読なので、映画に外伝の要素が入っているかは分かりません)
原作とは大きく話が違うので、原作を知らない人に原作もこういう話だと思われないかと、ちょっと心配です。
私自身は「原作と違うこと」それ自体は別にいいのですが(映画は2時間程度でまとめないといけないのだし、そもそもジブリの原作付き映画は原作を大きく分解・再構築してるものだし)、
今作はその再構築が、毒にも薬にもならない凡庸で世界観の狭い箱庭ファンタジーと化してしまったのが、題材に対して、ひたすら「勿体ない」と思ったのでした。

いやー、本当に世界観の狭いこと狭いこと(^^;
広大な世界を舞台にしたはずのロールプレイングゲームで最初の町に寄ったら、
いきなり主要キャラ全員とボスキャラが勢揃いしてしまった感じと言えばいいでしょうか(^^;;

「説明不足」というより「説明が下手」なのでしょうが、どのシーンにどんな意味があるとか、何故こんな事が起きるのかとかが非常に分かり難い映画かと。
“伏線”というものをもう少しちゃんと張っておいて欲しいと思いました。
特に最後の「アレ」は、「イヤボーンの法則」としか思えないのではないかと(苦笑)
クモが具体的に世界に何をしたのかも、何故にアレンが父を殺したのかも、最終的に「世界の異変」は解決出来たのかも、テルーの唐突な正体も、映画を見ているだけではほとんど分からないのではないかと思います。(かといって、アニメのオリジナル要素も強いので、原作を読めば全て分かるとも言えません)
そして、説明不足すぎるかと思うと、一方でテーマを全て人物の「セリフ」で語りまくってしまったりとか、
あーーー、うーーー、とにかく見ていて辛い。

最終対決の安っぽさはどうにかならないものかと;
勧善懲悪RPGのボスキャラ戦と考えればいいんでしょうか。

「ゲド」があまりに何の活躍もしないのには少し驚きました。
主人公をアレンに設定したのは分かりますが、本当にゲドは「何も」しません。
アレンを支える師匠的ポジションでのやり取りさえも、描写が皆無とは言いませんが、十分とは言い難いです。
「ゲド戦記」なのになあ(^^;
タイトルになってる人物の活躍し無さっぷりで「トイレット博士」を思い出したりしました(笑)
アレンも、あの描写でアレンに感情移入しろと言われても困ります。

あちこちで言われていますが、「どこかで見たシーン」がてんこ盛りな印象でありました。
ナウシカやもののけやラピュタや千と千尋の香りが濃厚なこと(笑)
他にも、建物の足場の悪い箇所を移動する様を見ていると「ICOやワンダは面白かったなあ」とか思い出したりもしました(笑)

エンディングで「原案:シュナの旅」と出ていたのは何なんでしょう?
原案というか原作は「ゲド戦記」では無かったのでしょうか?
後からシュナの旅の本を読み返してみたら、「人買いの車」なんかは確かにそのまんまっぽいと思いましたけど(苦笑)

ジブリの今後が心配です。
後継者の育成は大事なのだなあと、アレンとゲドの姿を見ながらも思ったのでした。

公式サイト

■8/16追記
原作者 ル=グウィン氏のコメントが出ましたので参考までに。(英語です)

で、Wiki翻訳

自分で英語を訳してはいないのであくまで翻訳を見ての話という前提ですが、
いちいち「全くごもっとも」と思える内容で頷いてしまいました。
大人の対応を取られながらも、深い失意が伝わる文章で痛々しく、とてもやりきれません。

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