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2007年2月 6日 (火)

それでもボクはやってない(映画)

(周防正行監督)

「Shall we ダンス?」の周防監督の11年ぶりの新作です。
満員電車で痴漢に間違われ、容疑を否認した為に1年に渡る(99.9%勝ち目がない)裁判を戦うことになった青年を描いた冤罪物。
3年以上の取材の上に描かれたという、逮捕から裁判にかけての描写が緻密かつ冷静に描かれ、地味な裁判の描写が長く続きながらもきっちり映画として面白いという見事な作品です。
後味はテーマ上“当然の事ながら”とびっきり悪いですが(^^;
老若男女が見ておくべき問題作にして傑作です。

と言いつつ自分は、評判がいいのは知っていましたが、見るのにかなり決断力と覚悟がいりました。
見ると怒りで血管が切れるのではないかと思いましたので(^^;

と言うのも、自分も10数年前に満員電車で女子高生に痴漢と間違えられた事がありましたから。
自分の場合は、“真犯人”がその場で名乗り出てくれたので事無きを得たのですけどね。
ちなみに、真犯人=女子高生の友達=女で、女友達同士のイタズラだったのでした。
“被害者”と“真犯人”の2人でケタケタ笑っていましたが、結局コチラには詫びの一言もありませんでした。

思い出すだに腹が立っていましたが、この映画の主人公のように無実の罪で人生を破滅させられた人の辿る道を詳細に見せられると、自分はどれだけ運が良かったのかと思いつつゾッとします。
本当に、男なら誰でもが容易に冤罪に巻き込まれる可能性があると思うと、下手なホラー映画などよりよっぽど恐ろしい映画です。

こういう映画だと、下手な監督なら冤罪を受けた主人公=善で、裁判所や痴漢被害者が作品的に単純な悪役というような描き方にもなりかねないですが、本作は「本当の痴漢犯人」の描写なども挟み、ただ一方の立場のみに肩入れせずにドライに描かれており、作品としてのバランス感覚も気を使われていたと思います。
バランスのよい視点で描かれるからこそ、描かれる話に説得力があります。

映画は、これまでは何となく分かったようなつもりになっていた『日本の刑事裁判の現状』の姿と問題点を明確に表してくれます。
何のかんの言っても『裁判は真実を明らかにする正義の場』という“幻想”をある程度は持ってしまっている人は多いかと思いますが、
実際のところは『“神ならぬ、万能ではない人間”が集めた証拠を元に有罪か無罪かをただ決めるだけのところ』に過ぎないと言うことを、自然にストンと分からせてくれます。
そしてソレにいかに多くの立場や思惑や因習や制度が大きく絡んでしまうかと言うことも。
『裁判官が無罪判決を出すことがいかに難しいか』『無罪判決を出しても被告人以外に誰も得をしない』といった話や、『有罪率99.9%』という『事の真偽より、まず有罪ありき』の数値が実に恐ろしい。
当然ながら「痴漢の冤罪」に限った話では無いですしね。

実際に犯罪を犯した痴漢犯人はとっとと僅かな示談金を払っておとがめ無しで、無実ゆえに罪を否認をした人は何ヶ月も拘留され裁判になれば勝ち目はない。果たしてどちらが「反省の色がない」のやら。

そして、映画「ゆれる」を見た時にも思いましたが、
いかに人間の記憶という物が曖昧か、裁判というものがいかに曖昧な情報に左右されてしまうのか、と言うことも感じさせられる映画でした。

主人公があまりに無防備すぎて、あれでは痴漢に間違えられても仕方ないとも思ったのですが、人間一度は痛い目に合わないと学習しないものかも知れないですね。
冤罪を無くそうと思えば、究極的には「男性専用車両」でも作ってもらうしかないのではと思えてきます;

見る前には「見ながら怒り心頭になってしまうかも」と思っていましたが、その点は大丈夫でした。
映画の描写がドライだったこともあり、落ち着いて見られました。
143分という長時間も苦にならずに引き込まれる、いい映画です。

男性は誰でも簡単に覚えのない罪で破滅する可能性があり、
女性は勘違いでも簡単に無実の人間の人生を破壊することが出来る訳で、
勿論、一番悪いのは痴漢を働く犯罪者に間違いないのですが、
女性の方はくれぐれも犯人を適当に選ばずに、慎重に犯人が誰かを見定めてから痴漢を吊し上げていただきたい。
犯人が「男」であるとは限りませんから。実体験から大マジで。

公式サイト

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コメント

それは、大変な目に合われましたね。
私は女ですが、それでも怒りを禁じえませんでした。
今年観た中で、この映画は、一番面白かったです。

あの〜”お気に入りブログ”にリンクさせて頂きました。
一言お断りを入れようと、思いました。ではでは。

投稿: あん | 2007年2月 6日 (火) 15時09分

自分の場合は電車内ですぐに解決しましたが、それでもトラウマになりますねえ。参りました;

映画は怒りと恐ろしさを思い切り感じさせれらましたが、それなのに本当に面白かったですね。
リンクありがとうございます。そちらでも挨拶させていただきます~

投稿: でんでん | 2007年2月 6日 (火) 23時37分

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受信: 2007年2月 6日 (火) 15時04分

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