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2009年8月 4日 (火)

サマーウォーズ(映画)

(細田守監督)

時をかける少女」の細田監督の新作。
一人の少女の気持ちの変化を追った“青春映画”だった「時かけ」とはかなり方向性の違う作品で、
「田舎の大家族」「アクション」「ネット世界」を主軸とした“群像娯楽映画”として、子供からお年寄りまで楽しめる、広い年齢層に向けた楽しいエンターテインメント作品になっていました。
難しく考えずに個性豊かな大家族の面々の奮闘が楽しめる、いい映画だったかと。
ただし、「時かけ」のような“爽やかな切なさ”は少なめなので、「時かけ」が好きだった人が“ジュブナイル・青春物方面”に期待するとちょっとスカされるかも知れません。
門戸は「時かけ」よりも広くて「一般大衆向け」かと思いますが、好みは別れるかも。(自分も「比較してどちらが好きか?」と問われれば、好きなのは「時かけ」の方だったりします。本作も十分好きですが)

時かけを観た後だと、どうしても最初は主人公とヒロインに視点が行ってしまっていましたが、この作品は大家族達の皆が主役と言っていい群像劇でした。
従って、ヒロインや主人公の存在感はやや薄めです。
主人公とヒロインよりも、やたらと行動力のあるおっさん達や、なんと言っても栄おばあちゃんが非常に魅力的だったりして。
目立っている人も出番の少ない人も、家族の1人1人に味があって魅力的です。球児もおいしいですね(笑)

(今の世の常識的に見ると)いかにもコンピューターに疎そうな田舎のおじさんおばさん達が「コンピューター世界での戦い」なんてものに一体どうやって立ち向かっていくのか?、と思いますが、
実に明快な手段で、皆が予想外の活躍をしてくれるのが楽し嬉しいです。
この世界って、おじさんもおばさんも爺さんも婆さんも、ごく普通にアバターを持っていて、日常的にネットを活用している世界なんですよね。
そのことを「冒頭の説明」だけでなく細々とした描写で納得させてくれます。
ハイテクな事件に、いかにもなローテクな手段や泥臭い人間関係で立ち向かっていくギャップが単純に楽しいなあ。
あと、携帯やDSがあんなに活躍するとは思わなかった(^^;

この作品って、登場人物は主要キャラだけで29人と大変な数だし、設定やストーリーも一見複雑になりそうなんですが、それらを極めて『自然に、簡潔に分かり易く、かつ魅力的に』描いてくれているのが凄いですね。
特に予習をしていなくても、映画を見ているだけでキャラクターも話もスイスイ頭に入ってくるのが素晴らしい。恐ろしい構成力と表現力ですよ。

ネット世界でのバトルの流れは少々ツッコミ所もありましたが、カタルシス優先と考えれば十分に楽しめる物でした。
コンピューター相手にゲームで戦う展開は、懐かしの「ウォー・ゲーム」の三目並べを思い出しますが、この映画では勝負に使うゲームのチョイスが渋くていいですね。
ただ、自分はあのゲームは子供の頃にやったきりで、ルールをあまり覚えていなかったのがちょっと惜しかった気もします。
先に、この映画を楽しむ為に特別な予習はいらないと書きましたけど、『こいこい』のルールだけは概略を掴んでおいた方がいいかも知れません。
予習しなくても映画を楽しむこと自体に支障は無いと思いますけどね。

少々ネタバレですが、予告等で「」が出るシーンを見たときは、てっきりバーチャルな存在なのかと思ってました。
あんな役どころで出てくるとは、ビックリしましたよ(^^;

ネット世界が戦いの舞台になるとは言え、その描き方が必ずしも否定的なものでも無く、後ろ暗さがあまり無いのが心地よく見られるところかと。(まあ、情報管理の一極集中はヤバイと思いましたけど)
基本的にユルくて陽性な映画なんですよね。ラストのアホっぽい空気が好きでした。

2回目感想



公式サイト

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コメント

さすがに封切り直後、日曜に思いつきで観にいこうとしたら満席だったので(かわりにエヴァ破を観た)、
月曜にリベンジ。朝のうちにネットで予約購入していたのですが、平日の夜でも満席に近かったですね。
「時かけ」はかなり幅広いターゲットだったと思うのですが、サマーウォーズは好みが分かれそうです。
でんでんさんは、「バトルプログラマーシラセ」ってご存知ですか?ハッキングでビル爆破したり人工衛星
落下させたりという破天荒なアニメでした。それに通じるものがあるなあと。

テレビのCMチラッと見て「よろしくおねがいしまーす!」が何だったのか、それだけで猛烈に観たくなって
行ったので、ほとんど予備知識なしでしたが、でんでんさんのおっしゃるようにあれだけ大勢の登場人物
を全員すんなり(消防士・救急隊員あたりのオジさんたちは見分けつきませんでしたが)受け入れさせる
のはすごいですね。

オズのネット空間はリアルすぎずコミカル、パステル調の色使いが楽しそうでした。
キングカズマはカッコよかったです。「師匠」万助のアバターが○○だったのは思わずニヤリ。
ケンジの代用品アバターのあまりの脱力デザインに思わず笑ってしまいましたが、劇場のあちこちからも
クスクス笑い声が聞こえてきました。映画館ってこういうのがいいですね。

長野の山野の背景などがキレイで、これはいずれブルーレイでもう一度観たいかもです。中学のころに
父親の実家を訪れ、祖母を中心に親戚が大勢食卓につくって経験があったのですが、そんな懐かしい「田舎」
の思い出が蘇ってきました。しっかりしている女性陣(一部除く)に対して、いくつになってもどこか子供っぽい
男性陣、このあたりもいい雰囲気でした。大おばあちゃんの手紙にはグッときました。

実は映画館で映画観るってのが実に20年ぶりだったりします。自分でもどういう心境の変化だったのやら。
でもエヴァもサマーウォーズも観に行って良かったです。

次はライダー&シンケンジャー劇場版!?

投稿: Masa_nus | 2009年8月 4日 (火) 21時50分

自分は日曜夕方に見ましたがほぼ埋まってましたねー(見渡したわけではないので満席だったかどうかは未確認ですが)

好みは確かに別れるかも知れません。
と言うか、「時かけ」にハマったタイプの人なら今作にはそこまでハマれないと言う人もいるかも。
自分も比較して「どちらが好きか?」と問われれば「時かけ」が好きです。

しかし、対象年齢層という意味では、子供からお年寄りまで楽しめるとすれば「サマーウォーズ」の方かなとも思いました。
時かけはどちらかというと、青春物やジュブナイル・少女漫画が好きな層に受ける作品と思いますので、
「一般大衆向き」と言う意味ではこちらかなとも思ったりします。
実際の所は分かりませんがー

ケンジの代用アバターは良かったですねえ。
風景も綺麗な良い映画でした。

投稿: でんでん | 2009年8月 5日 (水) 00時31分

私も少女マンガが好きなので「どちらが好きか?」と問われれば「時かけ」が好きです。

でも「サマーウォーズ」も好きです。こちらのほうが、幅広い層に楽しめるでしょうね。
OZの世界の、あっという間に処理されていくデータを視覚的に見せてくれ、もう〜ぽかんと楽しみましたよ。
栄おばあちゃんから小さい子供たちまで、アバターを持ってましたね。
ホント!ケンジの代用品アバターのあまりの脱力デザインに思わず笑ってしまいましたねー。

投稿: あん | 2009年8月 8日 (土) 03時15分

OZの描写、楽しかったですね。栄おばあちゃんまでアバターを持っているあたりがネットの普及っぷりがよく分かりました。
ケンジの代用アバターは、見れば見るほど味があるいいデザインですねえ(笑)

投稿: でんでん | 2009年8月 8日 (土) 08時17分

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