雨を告げる漂流団地
(石田祐康監督)
子供達が団地で大海を漂流する話。
「団地で漂流」という大仕掛けはファンタジーだけど、後はひたすらシビアで現実的で重くて痛い作品でした。面白かったですけど。 …ホント色々痛そうだった;
以下ネタバレ注意。
設定だけを見ると児童向けの夢に溢れたワクワク冒険物と言う感じですが、漂流した際の食糧問題とか怪我とか人間関係のギスギスとか、「漂流」と言うものをかなり真面目にシビアに突き詰めた話でした。夢も希望も無い。
そりゃあ、いきなりロクな準備も無くあんな状況に巻き込まれたら、食料も確保出来ないし、身体もなかなか洗えなくて臭くもなるよなあ。
魚を釣ってなんとかするなんてのも道具も経験も無い子供ならどうにもなるまいし。(そもそもあの世界に普通の魚はいるのか)
ブタメン買ってて本当によかった!
怪我の描写が生々しく痛そうだったのも印象的でした。
ラストで現世に戻れても怪我自体は直ったりしないんですよね。物語的には成長の証として残ったと言えるかもだけど、怪我した子はあの後ちゃんと医者に行ったほうがいいですよ、特に頭打った珠理はヤバい。
人間関係のギスギスはむしろそこが作品の肝ですね。ギスってたのは主に熊谷と夏芽と令依菜だけど、未熟で面倒くさくて大変だよ( ノД`)
夏芽が大事なのについ攻撃的になってしまう熊谷も未熟ですが、夏芽の面倒臭さが本当に大変でした。いや、分かる。分かるからこそもどかしい。
あの面倒臭さは自己肯定感の低さ故なんですかね。適度な自己肯定感大事…。
団地が沈みかけて皆がイカダで脱出する際に夏芽が残って大変なことになりますが、そこで夏芽もイカダに乗っていればあのまま帰れちゃったりしたんですかね。
まあ、その場合はのっぽくんの行末も分からないし、夏芽と熊谷も本音でぶつからないして、ある意味バッドエンドで終わっちゃうんですけども。やっぱり分かり合おうとしたら時にはぶつかって吐き出さないとですね。
令依菜に関しては、常に「他人のせい」なところが軽くイラッと来ますが、遊園地の精(?)さんと会って少しは成長したのでしょうか。
そんな中で珠理は非現実的なほどに天使で、逆に大丈夫か? という気にもなります。いい子過ぎる…( ノД`) …帰ったらちゃんと頭の怪我は医者に見てもらうんだぜ。
ノッポさん…、じゃないのっぽくんは、最初はおじいさんの子供時代とかかと思いましたよ。古い団地の精霊的なものだったんですかね。草が生えてるデザインがなるほどです。
ラストでなんとか帰れたけど、どれくらい時間が経ってるんですかね。親は心配して探してるけど警察沙汰にはなっていないくらいの時間、ってことで、1日経ってないくらいでしょうか。
「団地」の描写が細かくて面白かったですよ。自分も子供の頃は団地住まいだったし親戚や友達の家もああいう団地だったりしたけど、懐かしいなあ。
バルコニーのパーテーションは破ったことが無いので破りたいと思いました。
古い建物のノスタルジー描写がよい…。壊れていく描写がよい…。
それにしても、本作とか「ぼくらのよあけ」(原作既読)とかドンブラとか、昨今やけに団地付いてるけど、たまたまでしょうね。
教室も漂流するし、ひょうたんな島も漂流するし、銀河も漂流するし、大変ですよ。次は漂流会社だな(違)
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