すずめの戸締まり(新海誠監督)
土曜に観ました。パンフ等はまだ読めていないけど、とりあえず思いつくままに雑感。
途中までは「天気の子」と比べても描写はコメディ寄りかと思ったけど、かなり重い作品ではありました。
先日テレビでやってた冒頭12分放送を見た以外は出来る限り前情報を入れずに観ましたけど、地震がモチーフなのはその放送時点でも分かりましたけども、ここまではっきり現実の震災モチーフだったとは。
いやまあ冒頭の「船」でチラリとは思いましたけどね。だから「神戸」だったんですねえ…。
(自分も阪神淡路の経験者ではあるものの大きな被害は無かったのですが)震災被害者が観るにはかなり覚悟のいる作品かも知れません。
しかし、誠実な描写だったとは思います。…10年以上経った今だから作れる作品ではあるかなと。
ダイジンは途中までは「なんて厄介な猫だ」と思っていたのに、最後に泣かされるのがズルいですよ( ノД`)
人間サイドはハッピーエンドでしたけど、犠牲なしでの決着は出来ないのだなあ。
東京までのダイジンの奔放っぷりは、何百年ぶり(?)かの自由を満喫出来て、鈴芽に優しくされて浮かれちゃってたんですかね。
そして東京で鈴芽に拒否されてしおしおになっていたのが、最後にはふっくらした姿に戻れたのはせめての救いだったのかなと。
人間がたくさん死ぬ事も気にしない辺りとかは、悪意があるわけじゃないけど「人とは価値観自体が噛み合わない」ことが示されているのが印象的だったかと。なにしろ神様だしなあ。
ところで、白いダイジンと黒いサダイジンが巨大化すると白黒が逆になるのは、陰陽モチーフだからですかね。
環おばさんとの口論のシーンは辛いですな。そりゃあ親戚とは言え他人の子を預かるなんて大変なのだから、綺麗事だけでなく内心不満だってあったのは本当でしょうけども、
わざわざ心配して東京まで鈴芽を探しに来てくれる環さんに愛情が無いわけが無いんですよね。愛も憎もあって当たり前、人間だもの。
…このシーンの環さんの暴論は明らかに異常でしたけど、サダイジンの影響だった…んですかね?
そこのところがちょっとよく分からないんですけど、まあサダイジンが邪悪な心を刺激するってわけでも無いのでしょう。人間の善悪の観念には囚われないのだろうし。
「猫が喋る」ことで環さんと芹澤くんに常識外の事態だと伝わってくれたのはよかったですよ。「神さまらしい」ことも伝わったし。
常識外の事態に関わってることを身近な人に分かってもらえるのは助かりますよね。
そして環さんには幸せになってもらいたいので、岡部さんはがんばってください。
新海作品でよく思うことですが、今回も「体力すげえ」と思いました。新海作品の主人公をやるには男でも女でも体力が無ければ務まらない…。
冒頭から海辺と山を2往復している鈴芽が凄いですよ。若さって凄い!
芹澤くんは、第一印象はそこまで良い印象じゃなかったのに、描写が重なるごとに「いいやつ」感が高まっていく面白いキャラでした。
テッシーといい新海作品の友人キャラはいいやつ多いですよね。
それにしても選曲が渋いな芹澤くん(笑)
車での旅路の途中で、綺麗な景色だと言う芹澤くんに、鈴芽が怒ったように「綺麗、これが?」と言うところが印象的でしたが、日記の「3.11」で「ああああ!!」となりました。
あの日記が出てくるところは、死生観が達観した感じだった鈴芽に納得がいった場面でもありました。
東京の描写は「雨が降っていない」のが印象的でした。「天気の子」とは明確に別世界なのね。
「君の名は。」の時のユキちゃん先生とか、「天気の子」の時の君の名はメンバーとかみたいな過去作キャラの登場は今回は無かった…、ですよね?
自分が神戸出身なので神戸周りの描写は感慨深いものがありました。
と言いつつ「山の上の遊園地」は観ている間はどこがモチーフが思い出せませんでしたけど、あれはかつての奥摩耶遊園地がモチーフなんですかね。(観覧車は無かったようだけど)
それにしても、観覧車のアクションは色々凄かったですよ。鈴芽はよく落ちなかったものです。そして猫と椅子のアクションが凄え。なにその身軽さ。
今回は犯罪描写は無かったかな…と思ったけど、二人乗りはしてるか(笑)
あと無賃乗車…は、「椅子」だしノーカンでよかろう。(最初の船のも払ったのだろう、たぶん)
本作を観て以降、椅子にかわいさを感じるようになってしまいましたよ。椅子の解像度が上がってしまった…。
事前のCMで「走るかわいい椅子」=「イケメン草太さん」だと初めて知った時は衝撃でした(笑)
あのおかげで草太さんがめっちゃ親しみやすくなって助かります(笑)
検索していると「イケボ椅子」とか呼ばれていて笑いました。
焼きうどんにポテサラでちょっと引いてる草太さん(椅子のすがた)が良いよ。
寝相が悪くて寝起きも悪い草太さん(椅子のすがた)がかわいいぜ。…まあ寝起きの方は、後で意味が分かると危ないところだったのですけども。
それにしても、JKに踏まれるイケメン(椅子)とか、JKに座られるイケメン(椅子)とか、性癖を隠さない監督がステキだ(笑)
乗られた時とか3本足で倒れないようにバランス頑張ってたんだろうなあ草太さん(椅子)
鈴芽が椅子に乗った後で「乗っていいですかー?」と聞くところは笑いました。そりゃあ草太さんもツッコむわ。
鈴芽は(なにしろ椅子が相手だから)スキンシップに遠慮が無いのが可愛いかったですな。後から鈴芽当人が気付いたら赤面しそうな密着っぷりでした。
ラストの子供鈴芽とのシーンは、常世で会ったのが母親では無かった辺りが、子供鈴芽にとってはなかなかビターで厳しい話ではありましたが、
ここで子供鈴芽相手に語る鈴芽の言葉が心に沁みます。生きてさえいれば、また笑うことも愛することも出来るのね…。
ところであの「椅子」って、幼い鈴芽が高校生鈴芽から受け取って、高校生になるまで持っていたわけで、そこで完全に循環でループしてるんですね。
…あの椅子は、お母さんが作った椅子そのものなのだろうか???
マクドナルドの絵本「すずめといす」は、映画を観た後で読むと泣いちゃうじゃないか…。
愛媛でも神戸でも東京でも、鈴芽は出会いに恵まれてよかったですな。女子高生の1人旅(いやまあ椅子もいるけど)なんて危なっかしいのに優しい人達に出会えてよかったですよ。
着の身着のままで家を飛び出したのに、どうにかなる電子決済が便利ですな。スマホが濡れて壊れたりしなくて本当によかった!
本編の時間経過はきっちりとは分かりませんが5泊6日(エピローグで+1日?)くらいだったんでしょうか。
鈴芽は勉強の遅れが大変そうだけどがんばれ。
教師の試験を受けられなかった草太さんは、来年再チャレンジとなるんですかね。頑張れ草太さん。
それにしても、教師なんて時間に縛られそうな職に付いて「閉じ師」と両立出来るのだろうかと心配になるよ草太さん。閉じ師の仕事がどれくらいの頻度で発生するのか謎ですけども。
鈴芽は看護師を目指すようだけど、この2人が結婚したら互いに忙しくてなかなか大変そうですよ。
大変にどうでもいいけど、ロン毛な草太さんは教師になる時はさすがに切るんですかね? いやまあロン毛な先生もいるけど、金八先生とか…。
お爺さんも割とロン毛だし、一族的な理由でもあるんですかね。神に霊力が宿る的な…(たぶん違う)
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コメント
監督の作風的に主人公はティーンエイジャーになるので、被災時点で幼い子供だった主人公の作品を作るならここが最初で最後のタイミングだったんだろうなと思いました。
環さんとの口論は小説版含めてどういう理屈か明言されてませんでしたが、すずめの「あなた誰」や、サダイジンが草太祖父との会話ですずめについて行くと言っていたわりにあのシーンまで姿を見せていなかったので東京からずっと環さんに憑依してて、その影響かなにかはあったのだと思います。本音というか普段押さえつけてたものが口に出やすくなるというか・・・
作中での彼の意図ははっきりしませんが、作品的にはここですずめが大切な記憶としていた「うちの子になろう」を環側では覚えてないと知ることで、すずめが特に考えなくダイジンに言ってしまった「うちの子になる?」がダイジンにとってなんなのか、を確認するために必要だったシーンではあったと思います。
なお、小説版によると芹澤の懐メロ選択は環さんへの接待として選んだものだが年齢の推測外してるので実際には特に環さん的には懐かしくも無かったようです。
投稿: | 2022年11月21日 (月) 13時19分
小説版で再確認したところ、最後に渡した椅子は草太さんが動かしてた現代のものより明らかに新品で、あの日に被災して失われた(=常世に流れ着いた)当時品だろうとすずめが推測していました。
なので
現世で作られる→被災して常世の景色の一部に→大すずめが拾って小すずめに渡す→本編で旅する→要石解除された草太さんの側に転がっててそのまま常世に
という流れになるのかと思われます。ミミズを封じようとしてたあたりのタイミングだと、あの場に椅子が二つあったことになるのですかね・・・?
あと小説版でぽろっと出てきた話ですが、芹澤と草太さんの間の貸し借りは、実際には草太さんが芹澤に2万円貸してるのだそうです。つまり草太さんを捜す口実でしかなかった模様。
投稿: | 2022年11月21日 (月) 15時41分
実際、今作るしか無いというタイミングではありますね。テーマ的にリアルタイム性も大事な作品ですし。
小説はこれから読むので楽しみにします。
椅子問題はなるほど一度失われていて常世にあったとするなら納得です。
芹澤さんツンデレですねえ。
投稿: でんでん | 2022年11月23日 (水) 14時38分